人の成長につながるのは 欲求の克服 ではなく、欲求が満たされること である。
これはアメリカの心理学者、アブラハム・マズローが唱えた マズローの欲求5段階説 というものであり、人は低次元の欲求が満たされることで、より高次元の欲求へと成長していくというもの。
マーケティングなどでも広く応用されている理論ですが、
ネットで検索してもよくわからん!
という人のために、わかりやすく例え話をだしながら解説していきましょう。
学生の方にもわかるように噛み砕いて説明しますので、今まで他の記事や書籍などで見たことはあるけどいまいち理解できなかった……。
という方の参考なればと思います。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説には、物理的な欲求である”生理的欲求“と”安全欲求“に、精神的な欲求である”社会的欲求“と”承認欲求“、”自己実現欲求“の5つが存在します。
欲求の種類だけ聞いても内容がわからないと思いますので、それぞれがどんな欲求であるのか説明していきましょう。
生理的欲求
生理的欲求はもっとも低次元な欲求に位置し、食欲・睡眠欲・排泄欲といった生きるうえで欠かせない欲求のことをいいます。
パソコンやスマホ・携帯電話でこの記事をご覧になっている方は、生理的欲求を満たしていると考えて間違いないでしょう。
もしも食べるものにも困っており、しっかりと睡眠をとる時間や場所もなく、排泄さえままならない状態の方が見ているのであれば、優先順位が違います。
まずは生きるために必要な要素をしっかりと確保したうえで、もう一度この記事をご覧になってください。
この条件を簡単に満たせない国も多数あるでしょうが、幸いにも日本では生理的欲求を満たせない方は非常に少ないと思います。
しっかりとご飯を食べて、食べたものを排泄し、夜になれば寝る。
これができていれば、生理的欲求は満たされているといって構いません。
安全欲求
生理的欲求を満たしたあとにやってくるのが、安全欲求です。
安全欲求とは、自己の安全や経済的安定のことを指しており、満たされた生理的欲求を安定して継続させることを目的としています。
とはいえ生理的欲求を満たしただけでは安全と呼べる状態には程遠いため、自身の考える生活レベルに必要な 最低限の金銭欲を満たした状態 のことです。
そのため人によっては安全欲求のレベルが違うため、まったく同じ金銭を受け取っていても安全欲求を満たしているかどうかは変わってくるでしょう。
たとえばAさんは、年収250万円しかありませんが、保険などにも加入し質素ながら経済的にも満足した生活を送っています。
ところがBさんは、年収500万円とAさんの倍の収入がありますが、これでは満足のいく生活ができないと、収入を増やすための努力を欠かしません。
Bさんは自身の考える最低限の生活ができていないため安全欲求を満たしておらず、Aさんは最低限の生活を確保できているので安全欲求を満たしています。
これが同じ条件でも、安全欲求を満たしているかどうかが変わる理由です。
あと○万円月収が多ければ……なんて考えている方は、自身の考える最低限の生活レベルに達していないので、安全欲求を満たせていないということになります。
社会的欲求
安全欲求を満たしたあとにやってくるのが、社会的欲求――所属と愛の欲求だといわれています。
どうして「いわれています」なんて曖昧な表現をしているのかというと、安全欲求を満たしていない状態で社会的欲求を求める、または満たしている方が多くいるからです。
なぜこのような現象が起きているのかというと、マズローの欲求5段階説でいえば社会的欲求は安全欲求よりも高次元の欲求になります。
ですが精神的欲求の枠組みだけで見ると、社会的欲求というのはもっとも低次元な欲求です。
そのため物理的な高次元の欲求である安全欲求よりも先に、社会的欲求を満たしてしまっている方が存在するというわけ。
では具体的に社会的欲求とはなにかといいますと、組織(会社やグループ)に所属したいという欲求と、愛したり愛されたいという欲求です。
仮に安全欲求を満たしていなかったとしても、自身が属したい組織やグループに加入し、幸せな家庭を築いたり恋人と仲睦まじくいられるのであれば、社会的欲求は満たしているということですね。
承認欲求
安全欲求と社会的欲求を満たしたあとにやってくるのが、承認欲求です。
この承認欲求には、他者からの承認欲と自分自身の承認欲(以後、自己承認欲)の2つが存在します。
他者からの承認欲は、社会的欲求で属した組織の中で 認められたい・尊敬されたい といったもので、自己承認欲は掲げた目標を達成できたかどうかで満たすことができるといえるでしょう。
言葉でいえば簡単なことですが、この2つを満たすのは今までの欲求とは難易度が変わります。
まず他者からの承認欲求ですが、これは悪い言い方をすれば 結果さえ出せば満たすことができる欲求 です。
ビジネスでもスポーツでも知的競技でも、結果をだしている人物は他者から認められ尊敬されます。
人柄が悪ければ嫉妬の対象になることもあるでしょうが、嫉妬も他者が認めているからこそ発生するものなので、他者からの承認欲求を満たすために使うのは間違っていません。
ですが自己承認欲となると、簡単にはいきません。
スポーツで例をあげるとわかりやすいと思うので、スポーツを例にだして説明しましょう。
あなたが陸上競技の100m走で、9.97秒を記録したとします。
これは記事執筆時の2017/12/08時点で日本最速記録であり、あなたは日本最速という称号を得ることができますね。
よほどのことがない限り、他者からの承認欲求は満たすことができているはずです。
ですが自己承認欲となると、9.97秒を出せたのなら次は9.96秒を、それが出せたら次は9.95秒と目標を引き上げていくでしょう。
そのまま順調にタイムを伸ばし続けていけば、最終的には日本最速ではなく世界最速、歴史上最速の称号がほしくなるはず。
そして自己承認欲を満たすためには、ウサイン・ボルトの持っている9.58秒の壁を破らなければいけません。
掲げた目標が高ければ高いほど、自己承認欲を満たすことは難しくなり、低い目標を設定していても、最終的には高い目標を掲げていたなんてことになるのが自己承認欲です。
自己実現欲求
承認欲求を満たしたあとにやってくるのが、自己実現欲求です。
今までの生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・承認欲求を欠乏欲求ともいい、自己実現欲求は存在欲求と呼ばれるものに変わります。
基本的には欠乏欲求にあたる4つの欲求を満たしているので、自分のやりたいことを好きなようにやるのがこの段階なわけです。
好きなことをやって、自分自身を成長させるための段階ともいえますね。
また 至高体験 といった、自己実現という文字からは想像できない一面も含まれているのですが、自己超越欲求 という自己実現欲求よりも上の段階にそれを設定しているものも多くあります。
このあたりを説明すると長くなるので省きますが、マーケティングなどで使われるのは大半が承認欲求あたりまでですので、自己実現欲求や自己超越欲求、至高体験について詳しくしりたい方は自分で調べてみてください。
マーケティングやマネジメントに役立つ理由
どうしてこんな理論が、マーケティングやマネジメントに役立つのか?
ここまでしっかりと目を通してくれた方ならわかると思います。
ですが昨今の記事というのは流し読みされることが多いので、ここまで流し読みした方でもわかるように説明していきましょう!
安全欲求を満たしていない人へ
安全欲求を満たすためには、自分の考えている最低限の生活をするための金銭欲を満たす必要があると話しました。
このことから安全欲求を満たしていない人には、「お金を稼ぐ方法」に焦点をあててアクションを起こせばいいということ。
堅実に営業されている会社もある中、悪い例としてあげるのは申し訳ないのですが「ネットワークビジネス」などは、安全欲求を満たしていない人が騙されやすいマーケティング方法ですね。
今は勧誘のときにネットワークビジネスであることや、簡単に儲かるなんて言葉をつかってはいけないので「簡単に儲かる」と思い込ませる話術を持った人であれば、簡単に人を連れてこれます。
とはいえネットワークビジネスで成功できるなら、他のビジネスでも成功できる可能性が極めて高いので、騙されたと思う人は考えが甘い+努力が足りないだけ。
あとはネットに蔓延している「誰でも簡単に○万円稼げる方法!」なんて情報商材も、この段階の人をターゲットにしています。
転職を斡旋する場合も、この段階の人をターゲットにしてマネジメントするのがもっとも成果を上げやすいでしょう。
理由は簡単で、今よりもお金が稼げるようになるから。
安全欲求を満たしていない人には、「簡単にお金が稼げる」というワードが魅力的に見えるのです。
社会的欲求を満たしていない人へ
社会的欲求を満たすには、組織に属するという欲求と、愛という欲求を満たす必要があると話しました。
そこから見えてくるターゲットは、組織に属していない人や独身者となります。
婚活などは完全にこの段階の人をターゲットにしており、安全欲求をある程度のレベルで満たせていないと話にすらならない状態です。
また皆が持っているモノをオススメするのも、社会的欲求を満たしていない人へのアプローチ方法として間違っていません。
組織というとわかりづらくなりますが、男性・女性というグループでわけでも構いませんし、20代・30代という枠組みで売り込みをかけるのもいいでしょう。
マズローの欲求5段階説的に言えば、この段階にいる人は安全欲求を満たした状態の人であるため、お金に余裕があり皆と一緒であることや愛を求めていることが多いからです。
勘違いしがちですが、転職の斡旋でこの段階のフリーランスの方を勧誘するのは非常に難しいと思ってください。
彼らは会社という組織には属していませんが、フリーランスという枠組みの中でSNSや仕事先を通じたコミュニティに属しています。
なんの組織にも属していないわけではないので、注意しましょう。
承認欲求を満たしていない人へ
承認欲求を満たすためには、他者からの承認欲と自己承認欲を満たす必要があると話しました。
この段階に到達している人は、お金に困っておらず出会いも必要ありません。
そんな人に何を売り込み、マネジメントするのかですが……簡単に言えば、人に頼られる環境を与えてあげる ことです。
頼られることで他者からの承認欲を満たすことができ、もっと頼られるようにと自身の目標を高く掲げてもらうことを目標にアプローチをかければいい。
会社であれば昇進させて部下をもたせれば、より働いてくれるようになるでしょう。
人目を気にする立場になっていることも少なくないので、美容関連の商品をプッシュしてみるのも悪くないと思います。
このように、アプローチをかけたい人がどの段階にいるのかを把握することで、それに対応した商品を売り込んだり、社内での人事異動をおこなったりとさまざまな用途に応用することが可能です。
まとめ
例題をもちいてわかりやすいように解説したつもりですが、いかがだったでしょう?
わかりやすくをテーマにしていますので、実際の意味とは違っているところもあるのですが、なんとなく意味は理解できるのではないかなと。
マズローの欲求5段階説は知っておいて損のない知識なので、マーケティングやマネジメントだけではなく、自己管理の観点で使用してみても面白いと思いますよ!
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