小説家になろうというサイトで大ブレイクしているジャンル『異世界転生(転移)』ですが、その中の不思議+性能ぶっ壊れアイテムとして有名な『アイテムボックス』について真面目に考えてみたいと思います。
作品によってはアイテムボックスなしでは物語が成り立たないものなども存在し、異世界転生モノはアイテムボックスという存在に依存しているといっても過言ではありません。
それにもかかわらず、アイテムボックスという不思議アイテムの設定がいまいち定まっていないので、魔法なのかギフト(神の恩恵)なのか、それ以外の技術なのかをはっきりさせてみましょう。
アイテムボックスというありふれたものであっても、背景をしっかりさせることでオリジナリティをだすことができますよ!
アiテムボックスの性能と種類一覧
アイテムボックスと呼称されるものはいくつかありますが、代表的な4つにわけてそれぞれの性能を比べてみたいと思います。
アイテムボックス(容器拡張型)
これはアイテムボックスの中でもっとも性能が低く、使い勝手が悪いものです。
理由としては『空間拡張』をほどこした容器をアイテムボックスとしているだけなので、見た目よりもたくさんのモノが入る、うつわでしかありません。
そのため中に入っているものはしっかりと時間経過により劣化しますし、外部から衝撃を与えたりした場合は中に入れているものが破損する可能性もあります。
そのうえどこに何が入っているのかを自分で探さなければいけないので、大きな容れ物としては活躍しますが、それ以上の活躍は難しいでしょう。
サイズが大きすぎる場合には、どこに何を入れたか把握していないと『入っているものがわからない』という最悪の事態にも発展します。
メリットを上げるとすれば、空間拡張しただけの容器なので、サイズさえ問題なければ『生物でも収納できる』ということ。
ただし容器が頑丈でない場合、中に収納した生物が暴れて、容器が壊れる可能性もあるので注意が必要です。
アイテムボックス(インベントリ型)
これは上記のアイテムボックスにインベントリという、目録機能のついたアイテムボックスです。
目録機能がついているため、どれだけの容量をもったアイテムボックスでも中身の確認が容易+すぐに取り出せるという、ゲームのような機能が盛り込まれています。
これだけ聞けば完全にアイテムボックス(容器拡張型)の上位互換のように思えますが、インベントリ機能がつくことによって『生物の収納ができなくなる』というデメリットが発生します。
アイテムボックス(時間停止型)
この機能がなければ主人公が使うアイテムボックスとしては2流……といえるほど、ぶっ壊れた性能を持つのが、時間停止型のアイテムボックス。
できたての料理を放り込めばアツアツのまま保存を可能にし、殺した獲物を放り込んでおけば鮮度を落とすことなく持ち運びが可能。
備わっている機能としては『容器拡張』『インベントリ』『時間停止』の3つなので、容器の入り口より大きいものは収納できないなんてモノもあります。
容量はあまり大きくないものから無制限と幅が広く、主人公以外でも国家や大手商会などでは保有している場合も少なくありません。
アイテムボックス(空間魔法型)
『容量無制限』『サイズ無制限』『インベントリ』『時間停止』『触れただけでモノを収納できる』『念じただけで収納したものを取り出し可能』と、ぶっ壊れた性能を持つのが空間魔法型のアイテムボックス。
マジックアイテムとして存在している場合は、指輪やピアスなどの装飾品である場合が多く、魔法やスキルとして使用する場合は、誰にも中身を奪われる心配がない+アイテムボックスの存在すらわからないという2段構えの防犯システムをもったチート技能。
神から異世界へ転移する際のギフト(神の恩恵)として付与される場合が多いが、空間魔法を使えるからという理由で後天的に技能として扱えるようになるものも存在する。
アイテムボックスは魔法やスキルで再現・作製可能なのか?
さきほどあげた4つのアイテムボックスですが、これらはギフト(神からの恩恵)以外で再現・作製可能かどうかを考えていきます。
結論だけ先にいうと『再現および作製は可能』なんですが、どのように再現・作製していくのかを説明するので、興味のある方はお付き合いください。
アイテムボックス(容器拡張型)の作製方法
容器拡張型のアイテムボックスを再現・作製する方法は以下の通り。
- アイテムボックスの元になる容器を用意する。
- 付与魔術士を使える人物を用意する。
- 空間魔法を使える人物を用意する。
- 容器に空間拡張の魔法を付与する。
たったこれだけの工程で、容器拡張型のアイテムボックスを再現・作成することができます。
アイテムボックス(インベントリ型)の作製方法
インベントリ型のアイテムボックスを再現・作製する方法は以下の通り。
- アイテムボックスの元になる容器を用意する。
- 付与魔法を使える人物を用意する。
- 空間魔法を使える人物を用意する。
- 目録学士を用意する。
- 容器に空間拡張の魔法を付与する。
- 5で作ったアイテムボックスにインベントリの機能を付与する。
容器拡張型のアイテムボックスよりも作製難易度があがり、目録学士と呼ばれる聞き慣れないものを使える人物を用意する必要が出てきました。
インベントリは目録ですので、目録学を学んだ人物の理が必要になってくるということです。
アイテムボックス(時間停止型)の作製方法
時間停止型のアイテムボックスを再現・作製する方法は以下の通り。
- アイテムボックスの元になる容器を用意する。
- 付与魔法を使える人物を用意する。
- 空間魔法を使える人物を用意する。
- 時魔法を使える人物を用意する。
- 目録学士を用意する。
- 容器に空間拡張の魔法を付与する。
- 6で作ったアイテムボックスに時間停止機能を付与する。
- 7で作ったアイテムボックスにインベントリの機能を付与する。
空間魔法を扱える人物を探すだけでも苦労するのに、時間まで操れる人物を探す必要がでてくるのがこの段階。
ファンタジー世界においては、どちらの属性も単独でぶっ壊れた性能を有しているので、保持している人物というのは基本的に少なく設定されています。
人材を用意するのは難しいですが、空間魔法や時魔法を付与できるレベルの付与魔術師を確保できるのであれば、作れないことはないでしょう。
アイテムボックス(空間魔法型)の作製方法
空間魔法型のアイテムボックスを作製する方法は以下の通り。
- アイテムボックスの元になる容器を用意する。
- 付与魔法を使える人物を用意する。
- 空間魔法を使える人物を用意する。
- 時魔法を使える人物を用意する。
- 目録学士を用意する。
- 容器を媒介に、異空間を作り出す魔法を付与する。
- 6で作った異空間に時間停止機能を付与する。
- 7で作った異空間に、触れるだけでアイテムを収納できる機能を付与する。
- 8で作った異空間に、念じるだけでアイテムを取り出す機能を付与する。
- 9で作った異空間にインベントリの機能を付与する。
空間魔法型のアイテムボックスに使われている技術でもっとも厄介なのは、『異空間の作製』と『空間転移』だといえます。
空間転移は言わずもがな、ファンタジー世界で異空間の作製など神の領域に片足を突っ込んでいるといってもいいので、このレベルの空間魔法を使える人物は世界に1人いるかどうか。
作成するのがムリだとはいいませんが、現実的ではないということだけは確かですね。
アイテムボックス(空間魔法型)の魔法やスキルによる再現方法
空間魔法型のアイテムボックスを再現するのに必要な要素は以下の通り。
- 空間魔法を高いレベルで自由自在に使用可能。
- 時魔法を高いレベルで自由自在に使用可能。
- 目録学やそれに準ずる高い知識をもっていること。
- それらを融合させ恒久的に発生し続ける異空間の作製。
- 異空間へとアイテムを出し入れ(転移)するのに必要な、膨大な魔力。
これらがあれば、魔法やスキルでアイテムボックスは再現可能です。
ただ……自力で空間魔法型のアイテムボックスを作れるレベルになると、俺TUEEEEなんて言葉ですまないレベルの無双モノになってしまいますので、素直に『ギフト(神の恩恵)』か『神遺物(アーティファクト)』として存在する程度のものにしておいたほうが無難でしょう。
インベントリ機能の実装は超がつくほど難しい
アイテムボックスの制作方法をしっかりと見た方は、あることに気がついたと思います。
それは『インベントリの機能を付与する』という項目が、一番最後におこなわれているということ。
なぜインベントリ機能なんてものが一番最後にまわされているのかというと、科学技術の発達していない世界では、インベントリの基準を作りそれを魔術として付与するのが超がつくほど難しいから。
まずこの画像を見てください。
同じキャベツの画像なんですが、形や色が違いますよね?
これを人間は同じキャベツとして認識できますが、アイテムボックスがこれを同じものであると認識するかどうかは疑問が生じます。
なぜなら、「完全に同じ形状ではない」からです。
葉の枚数の違いや、摘み取ってからの状態などでも差が生じますので、それらをまとめて同一のものと認識させるための魔術を構築しなければいけません。
これができないことにはインベントリ機能を実装したアイテムボックスは実現不可能なので、おとなしく空間拡張しただけのアイテムボックスで我慢しましょう。
インベントリ機能を付与する魔術開発の難易度ですが、画像を数万枚並べた中から誤認なくキャベツだけ認識する画像認識ソフトを開発できれば、インベントリ機能の実装が可能だと考えてください。
いくら創作された物語で世界だとはいえ、そこは別に存在する現実世界の一部なので、同じ薬草でもゲーム内の薬草と現実世界の薬草は似て非なるものだと思いましょう。
アイテムボックスの中身を精査されないのはなぜ?
アイテムボックスが存在していることが一般的に露見していれば、身分の高い人物と会うときなどには身体検査だけではなく、アイテムボックスの中身も精査されなくてはいけません。
なぜかというと『簡単に武器を持ち込めるから』で、どれだけ信用されていたとしてもアイテムボックスの中身も確認せずに素通りさせるなんてことはあってはいけないです。
『人の命が現代よりも軽い』なんて文言が一度でも登場している作品ならなおさらで、アイテムボックスの有無を検知するような魔道具かなにかが発達していないとおかしい。
なのにアイテムボックスの中身が調べられることは少なく、アイテムボックスが高品質であるほど中身を調べられる機会が減っていくという謎の現象が起きます。
これは物語を制作している側からすると、そこまでやってしまうと面倒だから……の一言で片付いてしまうのですが、犯罪などにも容易に使用できることを考えると手を抜いていい箇所だとはいえません。
アイテムボックスを登場させるのであれば、それに見合った舞台とルールをしっかり作ってやりましょう。
神の恩恵(ギフト)や神遺物(アーティファクト)として取り扱うのが無難
ここまでしっかりと読んだ方には理解できたと思いますが、最低ランクのアイテムボックス以外は、科学技術の発達していないファンタジー世界では存在すること自体が非自現実的です。
とくにインベントリ機能がついたものが、高価だけど出回っているなんて普通に考えるとありえないので、VRMMOはともかく異世界転生や転移では扱わないほうが無難でしょう。
どうしても物語の進行に必要だというのであれば、転生や転移のときに神の恩恵(ギフト)として空間魔法型のアイテムボックスを使えるようにするか、神遺物(アーティファクト)として入手するように物語を運んでください。
VRMMOならインベントリ機能つきが当たり前
今までインベントリ機能のついたアイテムボックスがいかにありえないかを語ってきましたが、VRMMO(ログ・ホライズンやソードアート・オンラインなど)を舞台としたものでは、インベントリ型のアイテムボックス以外を使うのはやめましょう。
それはなぜかというと、VRであってもMMOというゲームの世界だからです。
ゲームの世界なら「薬草」というアイテムはすべてが「薬草」というアイテムに区分され、同じものでも違いがあればであれば「いい薬草」「傷んだ薬草」などと表記が変わり、消費する枠も別になります。
インベントリ機能の実装を行わないのも、リアル志向のVRMMOであれば面白いかもしれませんが、消費者であるプレイヤーが、不便すぎるシステムのゲームをやり続けることはありません。
VRMMOを舞台とする場合、作者は1つの世界を構築するのと同時に、世界のシステムも設計しなくてはいけないことを頭に入れておきましょう。
まとめ
アイテムボックスは非常に便利な道具でありシステムですが、登場させる世界によってはアイテムボックス1つで戦争が起きる程度には開発難易度の高い道具です。
誰もが気軽に取り扱っているので、読者の方もすっかり当たり前の認識になっていますが、どれだけふざけた技術が盛り込まれているのか、頭の隅にでも入れておいてください。
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